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実験生物にはどんなものがあるのか

動物実験に反対する人に問いたい。なぜネズミさんやウサギさんのような哺乳類の実験動物ばかりをターゲットにするのか。 愛玩動物にもなってて世間の関心を得やすいからなのか。それともネズミを崇拝対象にする某宗教(千葉県に総本山がある)の手先なのか。

いずれにせよこのようなバイアスは、生命の尊厳というものに対する正確な理解を妨げるものに違いありません。 そこで生物学実験歴数年、そのわりに業績のない僕が「どのような生物が実験に使われているか」をまとめました。

どれだけ多種多様な生物が科学進歩のために犠牲になっているか、刮目してご覧ください。

【注意】僕自身はこの中で2種類の生物しか扱ったことがないため、それ以外はPubMedの検索結果からかなり主観的に書いています。 「ぜんぜん違えよアホ」のような点があれば気軽に教えてください。
下に行くほど人間に近いです。

1) 大腸菌

大腸菌と言うからには大腸にいるヤツラです。「ヒトと関係なくね?」と思うかも知れませんが、どちらもDNA・RNA・タンパク質という共通の基本サイクル(セントラル・ドグマ)を持っており、遺伝暗号の読み方(コドン表)もヒトと全く同じです。そう考えると守りたい気持ちがフツフツと湧いてきませんか。

基本サイクルが共通であるため、ヒトや他の生物に含まれる遺伝子の性質を調べるのによく用いられます。 一般的な大腸菌の実験プロセスは、「特定の遺伝子を投入する」→「培養液に入れて増やす」→「実験する」→「終わったら全部殺す」という流れです。

1回の実験で殺される大腸菌の数は数億個。生命が平等だというのなら、これはもう人間同士のあらゆる戦争・虐殺を超える大災禍ですね。 YouTubeを見ていたらうっかり培養しすぎたので全部捨てたという学生がいるとかいないとか。

大腸菌の長所は圧倒的な扱いやすさ。1回業者から購入すれば、あとは培養液に入れるだけでエンドレスに増殖します。水に溶かしたDNAを注入すれば、誰の遺伝子でもホイホイ受け入れるビッチです。実験者が「もう帰ってアニメ見たい」と思ったら、冷凍庫に入れておけば翌日すぐに実験を再開できます。

2) 出芽酵母

お酒が作れます。パンが作れます。その上実験生物としても使えます。まさに歌って踊れるアイドル。でも使い終わったら容赦なく殺されます。A○B48のメンバーよりも気軽に使い捨てられます。

同じ単細胞生物である大腸菌と違う点は、ヒトと同じように細胞核やミトコンドリアを持つ「真核生物」の一種である事。 このため、より高度な細胞機能を研究したい場合によく用いられます。 とくに1996年にゲノム解読が完了して以来、ゲノム内の全遺伝子のからみあいを研究するシステム生物学という新分野で大売り出し中。

3) シロイヌナズナ

出芽酵母は菌類(キノコ・カビの仲間)でしたが、こちらは植物界の代表選手。 1世代が2ヶ月と異様に短いうえに室内でもグングン成長するため、インドア化の進む現代の生物学者にはありがたい存在。

植物学というのはメインの応用分野として「農業」を見据えてるため、基礎研究レベルでも「品種改良」を目的としている事が多いのですが、このシロイヌナズナちゃんはその方面で色々と有利(自家受粉できる、形質転換しやすい等)でモテカワ愛され上手。

ただ「農業」をバックにした植物学は、どうしても「医療」という圧倒的スポンサーを控えている動物学に比べると力関係が弱めになります。 一方でなぜか植物実験は生命倫理関係でうるさく言われることも少ないです。 そういう環境下のせいか、植物学系の人達はなんかいつものんびりしてるような気がします。

4) ショウジョウバエ

動物界のトップバッター、ハエです。 誰がどう見ても動物なんですが、なぜか動物愛護団体の圧力でハエたたきが販売中止になることはありません。 愛護してくれたのは徳川綱吉くらいですね。 動物学系ラボの女子が「ショウジョウバエかわいいよね!」とか言ってるのかわいいです。

動物の中では単純で飼育もしやすいため、動物特有の感覚器官や神経系の研究などに用いられています。 もちろん昆虫の代表者として、羽化リズムの研究という役割もあります。 友人から「こないだショウジョウバエの解剖した時に...」という話を聞いて、体長3mmのハエに解剖という概念が存在することにただただ驚愕しました。

5) ゼブラフィッシュ

お魚です。「脊椎動物」なので骨格レベルで人間と一緒です。まあ僕から見ればほぼヒトです。ほかの魚類をさしおいて実験動物としてよく利用される理由は単純明快、透明だからです。そのあられもない姿が身体の中まで見放題です。

よく研究されるのは発生分野。たった1個の受精卵が多細胞の稚魚にまで成長するプロセス。 (就職が)やばいと思ったが知的好奇心を抑えきれなかった学生たちに、その発育過程を隅から隅まで晒してくれます。

6) ハツカネズミ

いわゆる実験用マウス。哺乳類なので血液循環の構造までほぼ人間ですが、最近はさらに医療応用のために人間の免疫系を組み込んだヒト化マウスというのも存在します。

生物の遺伝子の性質を調べるには、その遺伝子をつぶした動物を作成してその差を調べるのが一般的ですが、マウスの特定遺伝子をつぶした「ノックアウトマウス」を作るのはだいたい1匹100万円くらいかかります。 科研費削減の進む昨今、「やらずに済むなら避けたい」実験であることは、誰に言われなくても研究者自身が一番わかっています。

7) アカゲザル

サルです。もはやヒトと違う点を挙げるのが困難です。サルより人間性に乏しい人間などザラですしね。

おそらく日本一サルを扱ってる京都大学の霊長類研究所は、数百匹のアカゲザルを飼っています。学生ひとりで毎日何億個も抹殺する大腸菌とはえらい違いですね。

研究内容としては、やはり動物の中でも特に人間に近いため、「人間特有の性質」を人間の代わりに調べるという事が多いようです。 つまり認知脳、心理学、そして人類の進化。 血液型の「Rh+」「Rh-」という因子はこのアカゲザルから発見されました。Rhという呼称はアカゲザルのドイツ語(Rhesusaffe)に由来します。

ここまで紹介してきたのは所謂「モデル生物」と言われるもので、他の生物種を含めた「生物全体のサンプル」として集中的に研究されているものです。 (それもほんの一部です。) これ以外にも、たとえばウナギの生態を研究している人は、ウナギを実験動物に使います。

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